航海のうた

出航の日を
私はよく覚えていない
ただ、気がついたら
舵を握っていた

嵐は突然やってきて
積み荷を奪い、帆を裂いた
それでも 船は沈まなかった

波に飲まれた夜
揺れる船の端で、星を探した
見つからなかった
しかし風はささやく
「まだ進める」

ひとりじゃない
気づいたとき
帆がまた、静かに膨らんだ

遠くに見える微かな灯台
黙って佇む陸の影
「お前なら行ける」

孤独を受け入れたとき
心の奥に
ひとつの港が見えた

叫ばず、嘆かず
潮の香りにまかせ
今日も舵を切る

この航海は
間違いじゃない

波の音が
私の鼓動と重なって
夜明けを知らせる

濡れた手で
風を読み、帆を整え
また進む

地図に名がなくてもいい

この航海のすべてが
私の人生だ

そしていつか──
同じ海を渡るきみが
私の航跡に気づくなら

そのときはこう言おう

「私は進んだよ。
風に逆らわず、
誇りを失わず。

きみはひとりじゃない。
さあ、ともに行こう。」

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