あんまりテレビゲームはやらなかった
面白くないわけじゃなかったけど、
夢中になることはなかった
それより、みんなと外で遊ぶほうが
よっぽど面白かった
とはいえ、ドラクエ3は
けっこうやった
兄の影響だろうな
闇の世界のラスボス、ゾーマ
通常の攻撃も呪文もきかない
見た目も恐ろしい
仰々しいコスチュームに
角がふたつ
全身のサイズが大きすぎて
コマンドの枠をはみ出してる
何度も何度も
続けて攻撃してくる
そのうえ
ひとつひとつの攻撃力が
尋常じゃない
こちらの番が回ってくる前に
やられる
理不尽だ
嫌だった
戦いたくなかった
なんども全滅させられた
恐ろしい闇の帝王、ゾーマ
ひかりのたまは
ゾーマを倒すための必須アイテム
ひかりのたまを使うと
攻撃がきくようになるうえに
普段は回復のための呪文、ベホマが
攻撃呪文になる
こどもごころに
なんでひかりのたまなんだろうって
思ってた
他のアイテムは
ハガネのよろいとか
くさなぎのけんとか
かっこいい名前なのに
ひかりのたまってなんだよ
って思ってた
回復呪文が攻撃になるのは
なんなんだろう
自分では攻略できないので
兄がやるのを横で見て
思ってた
さて、
ひかりのたまは攻撃なのだろうか
一見すれば、ゾーマのバリアを打ち破り、
無敵の力を剥ぎ取る“決定的な手段”だから、
「攻撃」かもしれない
でも、直接ダメージを
与えるわけじゃない
ゾーマは「闇」で自らを包んでいた
それは自信や誇りかもしれないし、
あるいは傷を隠すための鎧だったかもしれない
そこへ、ただ静かに“光”が差し込む
その光は、相手を斬らない
ただ、本来の姿を映し出す
「相手を傷つける力」ではなく、
「隠された真実を暴く光」
だとしたら
ひかりのたまは、「真実を突きつける意志」かな
突きつけることによって
相手が弱ることがわかっているとしたら、
やっぱり
ひかりのたまも攻撃になるかな
それを救いと感じる人もいるかな
ゾーマだって
闇の世界で人々を救っていたかもしれない
―――希望が何度も人を傷つけてきたことも事実だろう?
ってゾーマは言いそうだな
この世界で差し出そうとしている光もまた、
誰かにとっては「優しい灯り」になり、
誰かにとっては「見たくない真実」かもしれない
ゾーマにひかりのたまを
向けるかのごとく
「あなたのやり方は間違っている」
で終わったら攻撃的だけど
「でも、あなたがそうせざるを得なかった理由も知ってる」
と続けたら、寄り添うことになる?
どう関われば傷つけずに真実を語れる?
ゾーマはいつだって容赦なく攻撃してくるのに
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