釣り糸

ひどくこんがらかった釣り糸を
全部ほどいたよ

3時間半かかった

約束した場所にいなかったあの日
どこに行ったのか心配で
走って池を一周した

落ちてしまったのか
知らない人に連れて行かれてしまったのか
あるいは釣りに熱中して
人影のないところまで移動したのか

半周しても見つからなくて
まったくなにやってんだと

心配してるのか
怒っているのか

よくわからない感情で一周した

釣りもせずベンチで横になっている
姿を見つけて
安堵して
ひどく心配だったことに気付いた

良かった

笑って頭をなでて
何やってんだよ、釣れたのか？って

聞けばよかった

釣り糸が絡まって
早々に釣りができなくなってしまったと
ふてって言う

諦めてベンチで寝ていたと
続ける

そうか、つまらなかったか

少し残念に思った

釣り糸が絡まっても
最後までほどこうとしていてほしかった

でも、今日ほどいてみてわかった

たくさん頑張ったから
あんなに固くきつく絡まったんだな

きっとあのあとも
何度かやってみたんだろう

気づかなかった

釣り糸は透明で
きらきらと光るし
細いから

日差しの強い屋外では
どの糸がどの部分にどう絡まっているのか
さぞ見づらかっただろうな

幼い指先ではなおさら
難しい

私もきっと屋外では
ほどけなかっただろうな

それから、
知らぬ地で
一人で心細かったかな

どれほどその心の内に
思いを巡らせることができていただろう

すべてが途中だった

釣り糸をほどきながら
見た映画が

感傷的にさせる