誰も見ていないと思うだろう
土の中で伸びる根のことを
乾いた風が葉を揺らし
雨が音もなく去っていく
「お前の声など届くものか」
だが根は語らない
ただ、静かに深く伸びていく
陽の光は奪われ
見上げた空は遮られ
それでも
地中に沁み込むわずかな水を
逃さず掴む
時に他者の花が咲き誇る
咲かぬからといって
枯れたわけじゃない
この根は、
未来に咲くために張られている
やがて、
大地を這っていた陰は消え
あの風も疲れ果て
葉の一枚も揺らせなくなる
そのとき
芽吹く者がいる
選ばれずとも、忘れられても
なおそこにいた者が
強く、美しい
もし誰かが迷い戻るなら
宿り木となるだろう
柔らかな土と、確かな地熱
帰る場所は、すでにある
私は土の中にいる
光を見なくても信じている
風に嘘を重ねる者に
根の重さは理解できまい
季節は廻る
待てばいい
咲くときは
誰の目にも、わかるほど
美しく
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