灯の森

この森には
誰も気づかないほど小さな灯がある
風が吹いても、雨が降っても
そっと揺れるだけで、消えたりはしない

この灯は
誰かのために用意した道しるべじゃない
ただ、この森に生きるものとして
静かに灯してきただけだ

葉の裏に、記憶が宿る
枝の先に、祈りが残る
根の奥に、まだ言葉にならない想いが眠っている

この森は、誰を責めることもなく
季節のままに、時を重ねている

けれど
もし誰かが偽りの地図を広げ
自分の歩いた道だけが正しいと叫ぶなら

森は黙って
深く息を吸い
霧を濃くするだろう

目に見える光だけが
真実ではない

この森の静けさの中に
とげのように鋭い記憶も
やわらかく息をしている

だから
迷い込む者よ

静かに耳をすませばいい
焚き火の音の奥に
本当のことが、
いつも揺れているから

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